VOICE

海外生活サプリHOMEMESSAGE:先輩からのメッセージ>東京ドームホテル総料理長 鎌田昭男シェフ

先輩メッセージ / Message03:東京ドームホテル総料理長 鎌田昭男シェフ

鎌田シェフのお話を伺っていると、料理を極めたいというよりも、日本の料理界をどうにかしたいという使命が感じられますね。

確かにそれはありますね。結局、料理人というのはふたつのタイプに分かれるんですよ。片方は天才。もう何を作るかわかんない。とんでもない料理をポンポンと作り出すんです。たとえばピエール・ガニエールですね。もう片方は、文化を残そうとする人。でも過去のものを残すだけじゃ、何も進歩はない。過去のものも少しずつ進化させる必要はある。こちらの代表はアラン・デュカスですよね。ガラっと変えてしまう天才と、進化する料理を守る人。料理界には、この2タイプが必要だと私は思っているんですよ。

今も海外の研究をなされているようですね。

海外はよく行きます。オーストラリアではドライエージングビーフに出会いましてね。バクテリアを付着させて熟成させた肉なんですけど、脂の少ない肉なので年配の方でもおいしく楽しめるだろうと思っているんですよ。そうしたら、たまたまドライエージングビーフにはまっている肉屋から、今度一緒にアメリカに行きませんか?という声がかかったんですよ。ドライエージングの研究を向こうでやるらしいです。何かやりたいと思うと、必ずどこかから声がかかるんですよね。何でだろう(笑)?

それから実は、海外だけじゃなく、京都にも注目しているところなんですよ。イタリアンが来て、今度はスペインが来た。これから日本の洋食はどう進化していくか……。それにはやっぱり京都だろうと。日本の文化の原点があるはずだと思ってね。それで年に何回か、京都のレストランを回って勉強をしているんですよ。また日本から新しい何かが発信できるんじゃないかと思っているんです。

では、料理人を目指して海外に行く若者に、「海外に行ったらこういうことを学べ」というメッセージをいただけますか?

どんな料理も進化していますから、まずは働いている国の「今の料理」を学ぶことが大事ですね。どんな店でも哲学はあるし、おいしい料理が必ずある。それは100%学ぶべきです。時間がないわけですから、その場で過去にとらわれる必要はない。そして日本に帰って来てから、じっくりとその国の過去の料理の本をひも解いてみる。現在のことは、海外で学んできた。それでは、過去はどうだったか。そこで過去の本を読んでみると、きっとまた違った見方ができるはずだと思う。後は、体を張って、徹底的に学んでくることですね。好きとか嫌いとか、いじめられたとかは関係ない。1品でもいいから学んでくる。そういう姿勢でいたときに、初めて生命力が身についてくるんだから。

最後に、料理人にかかわらず、若者が海外に行くことの価値はどこにあると思いますか?

違う空気に触れられることですね。場所場所によって、空気がまったく違うんです。料理だったら、こういう空気だから、こういう料理ができるんだという発見がある。料理以外の仕事に関しても、こういう空気だから、こういうやり方になったんだという発見があるはずです。そうすると、日本との違いもおのずとわかってくるし、自分が日本人としてどうあるべきかというのもわかってくる。そうすれば、必ず国際人として毅然とイエス、ノーが言えるようになると思う。だから、海外は絶対に行くべきです。それはどんな国でもいいし、遊びでも何でもいい。僕みたいに、死ぬ気になって働く必要はないからね(笑)。

インタビュアー:株式会社エストレリータ代表取締役社長:鈴木信之

ライター:室井瞳子

PHOTO:堀 修平

インフォメーション
【鎌田氏が食の巨匠を招いて贈る「夏の特別賞味会」開催】

8月5日(水)、坂井宏行氏、岸田周三氏をお招きしての、「〜夏の特別賞味会 三巨匠 食の饗宴〜」が開催されます。
詳細は下記をご覧下さい。

夏の特別賞味会「坂井宏行・岸田周三・鎌田昭男 ~三巨匠 食の饗宴~」