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渡航者体験談 / vol.22

私の海外留学の目的は"Rebirth"でした。

2010年春、私には婚約者がいました。感謝してもしきれないぐらい私を社会人として成長させてくれた職場を寿退社し、彼との幸せな"第二の人生"が待っているはずでした。しかし破局。そこまで仕事漬け、そしてわずかな時間を割いて彼と恋愛をしてきた私は、すべてを失いました。それが留学生活のはじまりです。

おそらくそのまま転職した方が楽だったのかもしれません。でもそれをしなかったのは、大学生のときにワーキングホリデーで9ヶ月オーストラリアにいたのにも関わらず、毎日日本語生活をして、帰国したときにたいした英語力がついていなかった後悔が大きかったからだと思います。仕事もなくて恋人もいなくて、行くなら今しかない。でも行ってくるなら、今度は使える英語力を身につけて帰ってこよう。帰国して社会人として出直すときに胸を張っていられるように。そう誓って日本を離れました。

カナダでの留学生活

最初に選んだ都市はカナダ・トロント。理由は都会だから語学学校の選択肢もたくさんある、かといってバンクーバーよりは日本人が少ない、と聞いていたのが理由です。今となっては結局は自分の心がけ次第だと思うんですけど、この時点でのこの選択は正解でした。前回のワーホリ生活を通して、日本人に囲まれるとそれに依存してしまってどんどん楽なほうに流されてしまうのをわかっていたので、なるべく日本人とは関わらないような生活をしていました。迷子になって泣きそうになっているところを日本人が通りかかっても意地でも日本語は使わないといった具合です(笑)。もちろん言いたいことが英語で出てこなくて悲しいことは度々あったし、英語脳で会話ができたらもっと楽しいのにって思って苦しいことも度々ありました。それでも決して日本語に逃げず、語学学校に通う以外にも、先生や友達が話す英語をノートにとって勉強してみたり、ブログを日英両方で書いて自己表現をする練習をしてみたり、日本のマンガの英語版で表現の幅を増やしたり、リスニングの勉強にテレビを見たり、とにかく「一度できないのはOK、二度できないのはNG」と自分ルールを決めて、楽しんでできる努力を毎日コツコツ重ねていきました。妥協しなくてよかったなって心から思うのは、日本人は日本人同士でかたまることが多いなかで日本人とはほとんど出会わなかった代わりに、日本人以外の、親友と呼べるレベルの一生涯の友達ができたことです。英語が流暢で、それでもなお英語に対する向上心があって、留学生としてお互いの生活観を理解し合えて、安らぎ刺激し合える最高の仲間ができたのがトロント生活の誇りです。
バンクーバーに移ってからは、「楽しい」よりも「大変」でした。風邪でフラフラな中、引っ越したホームステイ先の環境が劣悪だったことからはじまりました。永遠に憂鬱が続くのではないかと思わされるどんよりとした空の下で海外生活をしているのかどうかすら感じられなくなるほど勉強に追われる日々。さらに通おうとしていたコースが開講されなかったり、期待していたインターンシップが想像と違ったりしたことで留学計画が何度も崩れ、立ち止まらなければいけないことも何度もありました。それでもがんばれたのは、努力しているのを認め見守ってくれるひとたちが近くにいて、遠く、都市や国境を越えたところにも、私のことを理解し、信頼し、応援し、心の支えになってくれるひとたちがいたからだと強く思います。ほんとにまわりに恵まれてるなーってこんなにも感じたのは人生の中で初めてで、ベッドの中でわんわん泣いたことがありました。

自力で探したバンクーバーの2度目のホームステイは、経済的なことも考えると最初の1,2ヶ月滞在すればいいやって思っていたのに、あまりにも素敵な家庭で、けっきょく帰国までお世話になりました。そのために、ほかの留学生がしているような余裕のあるお金の使い方はできなくなったけど、交友関係が広く、多くの人が出入りする家で、語学学校とは違う生の英語をシャワーのように浴び、留学生と過ごすのとは違うリアルなカナダ人の日常生活を体験させてもらいました。ビジネスカレッジでは日本とは違う北米のビジネス文化を学び、ビジネスレベルの英語力をつけ、インターンシップをつかむためにカナダの120以上の企業に電話をし、面接にこぎつけ、今までに例を見ない3つの内定をいただき、実際にインターン生として働くなかで英語環境にも対応できるという自信をつけることができました。常に自分自身と向き合い、やりたいこと・やるべきことを考え、悩み、相談し、1つ1つに精いっぱいの努力をする、苦しいながらもそんな繰り返しの日々で、気づいたら国際人としての感覚が身につき、英語力も自然と伸びていたように思います。

留学生活が再び楽しくなってきたのは最後のこ頃です。帰国する直前には語学学校やビジネスカレッジでは物足りないぐらいの英語力がついていて(もちろんネイティブレベルにはまだまだ程遠いですが)、まわりには「もう十分やったから遊んで帰ったら?」ってどこに行っても言われるのにも関わらず、私の今回の留学の目的は英語力の向上だからと言って、欲を張って最後の最後まで英語活動を続けていました。ランゲージエクスチェンジ、日本に帰った後の転職活動のための英語での履歴書作成や英語面接の練習、ダウンタウンの中心地で行った東北沖太平洋地震の支援のための募金活動、日系のお祭りの受付係、英語で講義を受けた茶道教室、エストレリータでアドバイスをいただいて実行したカナダのビジネスパーソンへのスモールインタビューなど、残りの期間で組み込めるだけのものを組み込みました。例えばスモールインタビューは、カナダの企業に訪問して、「国際環境で働く困難はありますか?それをどう解決しますか?」「ビジネスで日本人と関わる際に、戸惑う点は何ですか?」といったアンケートを取ってきました。ふだん留学生として生活しているとビジネスパーソンに出会う機会は限られるので、彼らの経験談を聞かせてもらうのは非常に興味深かったし、今後私自身が国際環境で働く際の参考になるはずで、非常に貴重な機会でした。また、彼らと対話できるだけの英語力とヒューマンスキルを得ていることを実感できたのもうれしかったです。多くの留学生はおそらくこのような活動までは手を伸ばさないだろうと思います。けれどたとえ一人でもフットワーク軽く行動し挑戦を続けたことが、帰国後の今の小さな自信や誇りになっていますし、今後の人生の大きな財産になっていくと確信しています。

今、感じること

帰国して2週間余りが過ぎました。知り合いに「楽しかった?」って聞かれるときの私の答えはいつも「行ってよかった」です。楽しかったかって聞かれると必ずしもそうではなかったけど、やるだけのことはやってきたし、これから先どう生きたいのかもみえてきたから、行ってよかったってすごく思います。この1年でふつう日本ではできないような経験をさせてもらって、自立、挑戦、世界的な視野、日本人としての誇りといった価値観を自分自身のなかに見出すことができ、新たな人生が送れそうです。留学生活を支えてくれたすべてのひとたち、留学生活の中で出会ってくれたすべてのひとたちに感謝の気持ちでいっぱいです。

留学を考えている方へ

大切なのは勇気ではなくて「覚悟」だと思います。語学の道に王道はないけれど、あるとしたらきっとあきらめず、限界を作らず、挑戦を続けること。そしてできるだけの語学力を日本で身につけていくこと(これが留学生活の大きな分かれ目になってきます)。留学すること自体にはなにも意味はないと思います。はっきり言って「なんのために海外に来たの??」って思ってしまう日本人を数多く見てきました(オーストラリアのときの私がそうだったように)。でも、うらやましくなるぐらいの海外生活をつかみとっている日本人も、数は多くないけれど確実にいます。どう過ごすかで留学の意味はいくらでも変わってくるはずです。キラキラした未来が創れますように。

田中有梨子さん
名前 渡辺明日香さん
渡航先 カナダ・トロント
渡航期間 2010年10月〜2011年10月
渡航目的 仕事に結びつけるための語学習得
ボランティアへの参加
見聞を広めて将来の可能性を広げる