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先輩メッセージ / Message20:ソーシャルファシリテーター 中野裕弓さん

キャリアウーマン時代の目標は?

「男の人と互角に勝負すること」です。いま思うと、本当に嫌な女性のタイプでしたね(笑)。私は今では、個人的にキャリア・コーチをしたり、キャリアについての講演、それも女性のキャリアプランニングなどをたくさんしているのですが、そこでは20代の頃の実際の私の生き方とはまったく逆なことを勧めていますね。つまり、女性が男の人をライバルに負けじと仕事するのは方向違い、時間のムダなんですよ。

でもその頃の私にとっては、男の人と互角に仕事をする、というのが目標でした。「君を女にしておくにはもったいない」なんて言われたら、祝杯あげていましたから笑っちゃいますね。しかも私が若いキャリアウーマンの頃には、そういう先輩の女性はたくさんいなかったので「女性の時代を切り開く」、「私の後ろには他の女性たちが続いている」なんて自負していたんです。社会での女性の地位をあげるんだ!なんて心に決めて、「みんな付いてきている?」と後ろを振り返ると、、、誰も付いてきていないの(笑)。みんな退社時間になるとキレイにお化粧しなおして、「スミマセーン、お先に~」と帰っていっちゃう。私は「そんな貴女達がいるから、私たち女性の社会での地位が上がらないのよ」とぼやいていました。当時の私は、とにかく仕事さえできれば社会に貢献できるって、かなり偏った考えを持っていたんです。

それが間違いだと気付いたのはいつだったのですか?

それは随分あとのことです。世界銀行に入ってからその考え方の間違いに決定的に気付きましたね。世銀でトップクラスの女性のマネージャーたちをじっくり観察したんですよ。私がこれまで日本のビジネス界で会った女性の先輩たちとは違うタイプでした。同じキャリアウーマンとしてどこが違うだろう。そう考えながら見ていたら、歴然たる違いに気付きました。

それはね、世銀のトップの女性たちは、殆どが結婚をして子育てを終わって復帰していた方々だったんです。おまけに出産、育児の間は休職ではなく、スパっとお仕事を辞めてまとまった時間、家庭にいた方ばかりでした。反対に、独身で頑張ってキャリアを続けていますという女性の数がすごく少ないんですね。一方、日本で私より年齢的にも先輩の女性たちは、みんな独身で仕事一辺倒で頑張っていました。私達の上にはガラスの天井があって、上にあがりたくてもあがれない、そこが頑張っている女性たちの悩みでもありました。そこに女性のキャリアプランニングのやり方の違いがありました。世銀のトップマネジメントの職にある女性たちは、ガラスの天井なんてなんのその、なんなく抜けて管理職としていい仕事を任されている。オフィスに子どもや家族の写真を飾って、ウィークエンドは家族とのクオリティタイムを楽しんで、そしてスタッフからも人望があって仕事ができる、ライフ&ファミリーのバランスがいいんです。

私は機会あるごとにトップマネジメントの女性たちに話を聞きに行きました。そこでわかったのは、まず彼女たちの武器は、1)仕事に就く前に修めた学問的知識と、2)出産までに培った実地の経験、3)そして子育て中のハウスマネージメント術。それに加えて4)家にいる間に、自分の専門性を高めるために学習、スクーリングを行って単位をとったりしているんです。家にいる間も最新の情報、スキルをとり入れて復帰にそなえているのです。ですから子育てが終わって社会に戻る時には、以前よりももっと進んでいる。まず基礎の学問、実地の経験値、それから最新の学問知識。そして子育てを通して人を育てる力、またハウスマネージメントで身に付けたいくつものことを同時にこなすスキルなどが備わる。だから彼女たちは、子育てを終えて社会に復帰した途端、飛び級していくんですよ。「結婚・子育てはキャリアの邪魔」と言っている人たちが聞いたら驚くでしょうね。

日本でも女性の管理職を増やそうという動きがありますが。数が少ないから女性を増やそうという考え方とは全然違うんですね。

よく聞く男女平等参画って男性が作った言葉じゃないかと思いますね。実は私達女性はそんなこと言っていないんですよ。「セクハラとか、そういう人権的に問題のある行動はやめてよね」って、それだけです。日本のように数を増やせばいいとうのとは全然違うんです。私は世銀でもワーク&ファミリーバランスの良い女性たちのあり方を見て、本当にいいなと思いました。女性の社会進出よりも、まず、女性が家事・子育てに手を抜かないでそれで培った力を将来に活用できるようにするのは、社会にとっていいことです。家事や育児がお金にならないからといって、男の人と同じように社会に出てお金の対価を求めることにやっきになっては家庭で子どもたちが犠牲になってしまいます。

私は子どもやワーキングマザー、ビジネスマン、経営者、さまざまな立場の方々にカウンセリングをしてきて思うことは、幼い頃に親が愛情を注ぐことに手を抜いてしまうと、子どもの心の中に大きな穴があいてしまい、その後、大人になってから、お金を払ってカウンセリングを受けたりしてその心の穴を埋めることになる。だから幼いころに母親(または父親)がふんだんに愛情を注ぎ、手塩にかけて子どもを育てると、子どもにとっては人生のいいスタートがきれるということ。また女性にとっても後日、それが実は自分のキャリアにとってもプラスに働くということなんです。

ここでひとつ、私がお気に入りのクイズを出します。男女100人がある会社に新入社員として入りました。男女50:50の人数です。最初はすべて同じ立場でしたが、数年経ったら、その中から主任に抜擢される人が出てきました。それから係長、課長と、どんどん上の地位に昇進していく人が出てきます。そして100人のうちの何人かは取締役会の部屋まで上がって来ました。取締役会の部屋のカギは、男性はそれまで使っていたカギであけることができます。しかし女性は、そこでカギを変えないとその部屋に入ることができません。仕事の卓越性やスキルアップを重ねていけば、男性は同じカギでどこまでも上に行くことができるのに、女性の場合は男性と同じカギでは途中までしか進めないのです。さて、女性が最後に必要なカギとは何だと思いますか?

何でしょう。母親としての目みたいなものですか?

正解!実は“女性らしさ”なんです。女性らしさがないとある意味で男性と互角に社会に貢献することができないんですよ。そう聞いて驚きました? 結局、男まさりでは、男性と同じ貢献しかできない。男性はひとつのものを分析して、分裂させる能力に長けています。一方、女性は、分裂したものを全部統合する力、ありのままを受けとめて育む力に長けています。いま、社会に欠乏しているのは、そういう女性の能力なんですね。女性特有の母性の力なんです。

ところで、世界銀行からはヘッドハンティングがかかったそうですが、どういう理由で中野先生に声がかかったのですか?

それはタイミングという要因がありますね。戦後、世界銀行からの借り入れで、首都高速道路や黒四ダム、東海道新幹線などインフラを整えた日本が、その後どんどん復興、発展して、借金を返済し終わりました。そして世界から貧困をなくすという世銀にお金を供給する側になり、ついにはアメリカに次いで資金供出国2位になったわけなんです。それで当時の大蔵省が、世界銀行に「お金を出させるだけじゃなく、もっと日本人を雇用しなさい」ってプレッシャーをかけたんですよ。

なぜなら当時、世銀には1万人のスタッフがいましたが、日本人はそのなかでわずか1%、100人余しかいなかったんですから。そしてその100人のほとんどがエコノミスト。いわゆる世銀のメインストリームの方たちで、人事や広報、総務などのサービス部門に日本人はほとんどいなかったんです。加えて、世銀は階級制度が厳密な組織だったのですが、マネージャーレベルには女性が少なかったんですよね。それでその時の世銀の人事採用プランとして日本国籍で、人事のマネージャー、そし女性を採用すれば、いろんな意味でのばらつきが一気に改善されるからと、、、。 募集条件が“日本国籍の女性の人事マネージャー”だったというタイミングで私が推薦されて、その結果、日本人初の人事マネージャーとして採用されたわけです。私はとてもラッキーでした。どんなに優秀でも、男性だったら対象外でしたから。

それからヘッドハントにはもうひとつの要因がありました。私はそれまで、東京にある外資系銀行で人事を担当していましたが、1991年その銀行が同じ米系の銀行に吸収合併されることになったのです。まさに青天の霹靂でした。 残念ながら私の銀行ではそのために120人いたスタッフを、80人に絞り込まなくてはならず、40名の大量リストラという事態になりました。私は人事として必然的にリストラ・人員削減を手掛けなければならなくなったんです。昨日までランチを一緒にしていた同僚を次々とリストラしなくてはならない厳しい現実に毎日、無我夢中でしたね。短いタイムスパンの中、全員を面談しました。一人ひとり人生の棚卸のようなカウンセリングをしながら話を聞きました。その中で自発的に40数名が手を挙げてくれて円満退職となりました。外資系の企業でリストラ40人、それで訴訟が1件も出ないって珍しいことなんですよね。それで、外資系の人事担当者のネットワークの中で私のことが話題になり、何人もの方にその秘訣を聞かれました。そこへタイミング良く、世銀へのヘッドハントの話が飛び込んできたんです。

だからリストラもピンチも、私にとっては次へのチャンスにつながったんですね。あれがなかったら、短大卒の学歴しかない私が、世銀のマネージャーのポジションをオファーされることはあり得なかったと思います。

何かシナリオがあるみたいですね。

そうですね。そんな気がします。しかもその時の世銀の採用試験は面接のみで、3日間で13人の管理職による口頭試問だったんですが、書く試験がなかったのもラッキーでしたね。もし記述試験があったら、今頃どうなっているかわかりません(笑)。でも私は話すことが得意でしたし、人事を担当してから独学でカウンセリングのようなものを学んでいたので、相手がどんな質問をしてきてもだいたい答えられたんですよね。

でもあるマネージャーの方に「あなたはどうして世界銀行に応募したの?」と聞かれて、思わず「いえ、応募したわけではありません、ヘッドハンターの方に声を掛けられまして・・」なんて正直に言っちゃって、一瞬「どうしよう」って思ったんですけど・・こう続けました。「日本には和をもって尊し」という考え方がある。でも西洋にはその考え方はない。西洋はディベートして闘って、勝ったところが負けた側を徹底的に倒す。でも日本は関わった人の顔を誰も潰さずにまとめることができる。その日本のやり方を、国際機関で試してみたい……。そんなことを言ったと思うのですが、どうもこれが受けたんですよね。

また、別の面接官から「世銀に入った後、あなたは何をやりたいか」と聞かれた時、とっさに「こういう組織で長く働くよりは、もっと直接的に人を助ける仕事がしたい」って言ってしまったんですね。そしたら、これもあまり聞かないような答えらしくて(笑)。でもそれが良かったのかもしれませんね。「この組織の人間は殆どがみな左脳型だから、右脳型・直感型のあなたのような人間も必要」と言われましたから。結局採用されて1993年から赴任しました。

著書の紹介
『100人の村と考える種』
『愛のコーヒーカップ』
『宇宙とつながる成功習慣』
『3つの箱~人生が一瞬で変わる思考整理術』

ベストセラーである「世界がもし100人の村だったら」の元となったメールを、中野さんが原文のままに訳した『100人の村と考える種』。ブームから10年たった現在、日本には何とも言えない閉塞感が漂っています。この美しいイラストブックが、また新しい世界観や観点を与えてくれるはずです。また『愛のコーヒーカップ』は、中野さんの中心的テーマである”自分の心を自ら愛を持って満たすこと”について記した小冊子。自分だけでなく周りや世界を幸せにする”愛の本質”について、やさしい言葉で綴っています。『宇宙とつながる成功習慣』『3つの箱~人生が一瞬で変わる思考整理術』は、忙しい社会人にもおすすめの自己啓発本。仕事に対して前向きになれる、明るいメッセージがたくさん詰まった本です。