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先輩メッセージ / Message18:自由人 高橋歩さん

20歳でアメリカンバーを開き、23歳で自叙伝を出すために出版社を設立、26歳で妻とふたりで世界一周旅行に出発。そして37歳となった今もなお、家族4人で世界一周の旅に出ている自由人・高橋歩さん。若者のカリスマとして絶大な人気を誇る高橋さんに、その美学やバイタリティの源について伺いました。すべての若者に贈る熱いメッセージをどうぞ!

PROFILE

高橋歩さんのオフィシャルサイトはこちらから
http://www.ayumu.ch/

高橋歩(たかはし あゆむ)

1972年東京都生まれ。20歳で大学を中退、バー「ROCKWELL’S」をオープン。1995年、23歳でサンクチュアリ出版を設立。当初は苦戦するも、『毎日が冒険』などヒット作を次々と出版。1999年、26歳で出版社の経営権を友人に譲り、再び無職に。さやかさんと結婚し、世界一周の旅に出る。2000年、沖縄に「ビーチロックハウス」、2003年に出版を中心としたファクトリーA-Worksを設立、2005年には沖縄に自給自足のアイランドビレッジ「ビーチロックビレッジ」をオープン、また、NPOオンザロードを立ち上げ、インドやジャマイカに無料で通える学校をオープン。2008年に再び、家族4人での世界一周の旅に出発。

歩さんが人生で最初に旅に出たのはいつですか?

19歳のときだね。浪人生をやっていて、やりたいことが見つからなくて、いろいろ悩んでいて…。で、テレビでやっていたマルボロのCMを見て、俺のやりたい仕事はコレだ!と。カウボーイだ!と(笑)。馬乗って、牛をつかまえて、夜はバーボンを片手にワラの上で寝る、みたいなね。これが俺の職業だと思ったんだよね。

もう俺、全部、映画とかマンガの影響で決めているからさ。俺の両親は小学校と幼稚園の先生で、俺はもう小さいころから赤レンジャーなわけ。だから今は赤レンジャー歴37年ね。どこ行っても必ず赤レンジャー、ジャイアンみたいな役なの。成績は小学校まではオール5。中学はビーバップハイスクールを見ちゃったから、ヤンキーになっちゃったけど、子供の頃はいわゆる勉強も運動もできるという子供だったの。で、クラスでイェイ!って言っちゃっているようなガキ。今と何も変わってないけどね。

小さい頃にはどんな夢を持っていたのですか?

小さい時は野球をやりたくて、リトルリーグ入って。でもいつも挫折。地元では1番だけど、中学に入ると5、6個の町内会が集まってくるじゃん。そうすると実力は4番、5番になっちゃうんだよね。高校1年のときは長渕剛さんに憧れてミュージシャンになるぞって音楽をはじめて。ちょっとコンテストで何とか賞を獲ったりもしたけど、正直これで一生食っていけるとは思えなくて。それから俺は地元が横浜だからさ、ずっとサーフィンもやっていたんだよ。でもプロのコンテストに受かる奴っていうのは、やっぱり違う。

夢はいくつもあったけど挫折をして、結局やりたいことが見つからず、大学は全部不合格。親に予備校に行けと言われて通ったけどさ、通っているうちに「もうダメだな、これ」って。行きたい大学もないのに勉強しているとさ、なんか腹いたくなんない? 無理やり頑張ると腹が痛くなるんだよ、俺。それでもう予備校はダメだなって思って、夢を探そうとしたんだよね。そのときに目についたのがカウボーイ。でもさすがに親にカウボーイになるなんて言ったら刺されそうだったからさ(笑)、英語の勉強に行くからって言ってOKをもらったの。

夜はファミリーマートでバイトをしてお金をためて、それで19歳でアメリカのテキサスに行ったんだよね。それが人生で初めての旅かな。空港についたときには、まったく英語も読めないしさ。マジ、わけわかんねぇ気分。荷物がどこから出てくるのか、聞くにも聞けないし。なんかすごい怖かったイメージがあるよ。もうすぐにでも帰りたいというかさ。こう見えて、普通の人だからさ。ああああ、どうしようってなったよ。

20代で書かれた著書『HEAVEN’S DOOR』には、「夢は逃げない、逃げるのはいつも自分だ」という素敵な言葉がありました。あの言葉が生まれた背景を教えてください。

俺は特別な才能があるわけじゃないのよ。本当に、ただ一般的なノリなわけ。だから同じ時間努力しても、俺よりうまく行く奴のほうが多かったよ。俺より練習していないのに野球がうまい奴とかね。そういう意味で俺は、人間の能力はすべて同じではないと思う。こいつは野球がうまい、こいつはサーフィンがうまい、こいつはギターがうまい……。そうなったら、俺にも何かあるはずじゃん? 野球で争ったら負けるかもしれないけどさ。

お店を出したときが象徴的だよね。誰もが「若い奴が好きなことやって食っていけるほど、世の中甘くねぇ」と言ったよ。「借金で店はじめる?素人が?」「お前、マジで終わりだぞ。イケイケだけじゃ生きていけないんだぞ」と。もう150回くらい言われたわけよ。それに俺だってまだ20歳で、何をなし遂げていたわけじゃないからさ、一瞬心が折れそうになるわけよ。でもそういう時に仲間と話したのが、「物事と言うのは、うまくいくか、いかないかじゃない。うまくいくまでやれば、必ずうまくいく」ってこと。俺らバカだけど、やめなければいいんだよって。叶えるまでやりゃいいんだって。もしできないなら、それは「夢が逃げるんじゃなくて、自分が逃げているんだろう」ってさ。成功するまでやれば必ず成功する。「何で絶対成功するって言えるんだよ?」って言われたら、「成功するまでやめないからです」。シンプルな世界だぜ。

でも、そんな中でも言っていたんだけどさ、2回も3回も同じ失敗を繰り返すのは、ハムスター状態で同じところ回っているだけじゃん。そうなると、死ぬまでずっと同じところから動けない。そこだけは仲間と話していたよ。高飛車で粋がって生きるのはいいが、同じ失敗は絶対に繰り返さない。そうしないと、死ぬまでにうまくいかない可能性もある。だから自分の中に、二度と同じ失敗はしない、というルールはある。だから、俺は反省フェチよ。こけたら、「はい、反省会~」ってね。

僕も失敗はスタンプラリーって思っているんですよ。スタンプラリーは、同じところを2回押せないじゃないですか。だから全部スタンプを押したら、あとは成功とひきかえてもらえるって。

失敗が満員御礼ね。もう失敗のネタがない。それでいつか成功するんだよね。

歩さんは、キラっとする言葉を持っていますよね。

イメージが頭に入って、頭から出てきている感じじゃないんだよね。本を書こうとする。頭に入ってくるいろんなインプットがある。なんかいい言葉だな。語呂がいいなって思う。そうすると、思わず最初はそういう言葉を書いちゃうんだよ。でも最後に仕上げていくときに、残っている言葉というのは、体に入って自分の中に溶けた言葉。完全に自分の中で解釈が終わった言葉なんだよね。それが、体から出ているだけ。それしか俺の本には書いてない。うまいこと言って、頭から入って頭から出ちゃっている人が多いんだよ。もう、コピペみたいな状況ね。でも本当はその言葉の意味なんてわかってない。そういう言葉というのは、人にバレると思う。

本当に自分の中に入って、ナチュラルに自分が使えるようになっている言葉は、もしかしたら誰か似ている言葉を言っていたとしても、俺の言葉として生きる。それを意識しているからかな。俺、嫌いなのよ。頭に入って頭から取り出して、うまいこと言うみたいなことはさ。逆にそういう能力、俺はあるからさ。そういう自分が嫌なの。みんなが俺の言葉がいいと思ってくれているとしたら、それは俺がちゃんと体で解釈し終わって書いているからじゃない?