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先輩メッセージ番外編/受講生レポーター 林田あゆみさん

林田

今日は楽しいお話ありがとうございました。実は私、水谷さんに受け取っていただきたいものを持ってきたんです。

水谷

あ!可愛いお花ですね。

林田

これは最近、私が「MERRY」だと思ったもので、「ムーランルージュ」というイタリアの花なんです。一個の株から、いろんな色の花が咲いているのですが、ひとつとして同じ色の組み合わせの花がないらしくて。これまで市場では、そういう花は色の再現性が低いということで、はねられてしまっていたそうなんです。でも最近は、それこそが個性だということで出回りはじめたらしいんですよ。それが、すごく私には「MERRY」に思えたんですよね。私も、こんな風にいろんな個性を持った子供がいるのが受け入れられるような世の中にできたらいいなと思って。

水谷

そんな話を聞くと、余計に愛くるしいよね。僕も、ただキレイなものよりは、バラバラだったり、ちょっとひねくれていたり、デキが悪かったりするほうが好きなんですよ。本当にありがとう。それで林田さんは、カナダのどちらに行っていたの?

林田

1年程、カナダのトロントに行っていました。もともと日本でもインテリア会社で働いていて、留学先のトロントでもインテリア事務所でインターンとして働かせてもらっていました。

水谷

それはすごい。僕は海外で1年間も仕事をするような才能はありませんから。僕の場合は、短期間でちょっとずつ海外を回って、笑顔を通して一瞬だけその人の奥底に触れてくるという活動ですが。林田さんはトロントという場所をじっくり見てきたわけですね。トロントはどうでしたか?

林田

トロントは異文化の国で、いろんな民族が集まっているんですよね。この花と一緒で、ひとりひとりが本当に違うんです。「それってこういうことだよね」って話をしても、その背景をわかってもらえないのが普通。そんな中でも、みんなが集まって何か面白いことをやってみようという意識があって。私生活でも仕事でも、いろんな場面でそういう懐の深い部分を見ることができました。

水谷

トロントでは何が一番おもしろかったですか?

林田

日本では、仕事のやり方にはいつも決まった形があったけど、トロントには、それがなかったんですよね。みんな違う国の人たちで、日本人は私一人。これが普通というやり方が、存在しないんです。だからいつも、どの方法をとるかというのが議論になる。それも日本なら、「新しい方法は失敗してしまうかもしれないからやめよう」となるけれど、向こうは「ちょっとやってみよう。うまくいけば今後取り入れて行けばいい」という感じで。私も日本人として何が提案できるのか、いつも考えなくちゃいけなくて。アシスタントレベルでもアイデアを聞いてもらって、そしてその方法を試すことができたのは、すごく貴重な経験でしたね。

水谷

確かに日本なら、入って1年目の新人には誰も期待していないし、お茶でも淹れていればいい、みたいな感じですよね。でもNYやトロントは、ある意味フェア。一人の人間のアイデアというものは、新人であっても10年選手であっても同一線上にある。人種のるつぼでは、信じられるのはコネでもなんでもなくて、自分の仕事でしかない。そういう意味では、誰もが一匹狼だし、ある種の緊張感を持っていなくてはならない。確かにタフさは必要だけれど、それは面白いことでもある。

日本は和を尊ぶ文化があるけれど、ひとつ間違うと、なあなあになるところがあります。義理人情の世界でワーワー言っているだけ。でも本当は、もっと国際標準の中でフェアに頑張った人が勝利を得ていくべき。そしてそういう人たちが、より多くの人を幸せにしていく……。日本も、そういうエキサイティングな国であってほしいよね。

林田

そうでないと、日本は残っていけないですよね。

水谷

本当にそう。統一民族であることには、良い面と悪い面、両方があります。たぶんこれまでは、日本は和を尊んで戦後復興してきたわけだけど、これからは和でつぶされていくかもしれません。日本だけですよ、こんなに同じ民族ばかりが暮らしているのは。ときどき気持ち悪いって思いますもん(笑)。僕もこの年になって、ようやく日本人なんてどうでもいいと思ってね。世界はひとつ、ひとつの夢というところに、周りの人たちにももっと早く気付かせてやりたいと思いますよ。でも東京に帰ってくると、みんな日本人同士でベタベタしている(笑)。本当は、もっと若い人には戦ってほしいよ。いろんな意味で戦って、自分も幸せになって、相手も幸せにする。相手を幸せにすることで、また自分も幸せになる。人間同士のコミュニケーションは鏡だと思うし、メリーゴーランドだと思う。日本の若い人たちには、そういうメリーゴーランドを世界に向けて発信してほしいですね。

林田さんの感想

今日は本当に楽しかったです。水谷さんがデザインを始めたころに感じた悩みというのが、ちょうど今の私の悩みにリンクしていて、水谷さんをすごく身近に感じることができました。私自身、デザインをやりたいと思うようになったのも、デザインの力で人に感動を与えたいと思ったから。昔、演劇を見たときに、非日常の舞台空間で感じた感動が忘れられなかったんですよね。私も、いずれはデザインの力で人を幸せにしたい、社会貢献的なこともしてみたいと思っていたんです。そうは言っても、働かないとお金はついてこないし、ちょっとジレンマを感じていたところで。でも水谷さんは、利益ありきじゃなくて、純粋にデザインの可能性を追いかけていて、本当にすごい方だと感じました。なんだか勇気をもらえたし、励まされた気がします。私もこれから、私なりのやり方で新しいデザインの形を探していきたいと思っています。