VOICE

海外生活サプリHOMEMESSAGE:先輩からのメッセージ>日本ビーチバレー 朝日健太郎選手

先輩メッセージ / Message12:日本ビーチバレー 朝日健太郎選手

オリンピックで、日本ビーチバレー史上最高の9位に輝いたときの感想を教えてください。

最初は、コロっと負けて終わりかな?と思っていたんですよね。僕らの実力は、24チーム中24番目だと思っていましたから。でもそれがプレッシャーをうまく緩和してくれたんですよね。だからオリンピックの試合は「楽しかった」の一言に尽きました。あんなに試合が楽しかったのは、春高バレーの決勝戦以来でしたよ。

インドア時代は試合が嫌だったとおっしゃっていましたが、ビーチバレーは楽しいですか?

うーん。いまだにプレッシャーに打ち勝つための準備はしています。試合の前の日はやっぱり嫌ですよね。「……明日、試合か」って(笑)。それを押し殺して「よしやろう!」と気持ちを切り替える作業は、やっぱりエネルギーを使いますね。

スランプに陥ることはありますか?

僕はスランプという言い方は好きじゃないのですが。でも2009年は、うまく物事がかみ合わない年でしたね。やはりオリンピックを経験した以上は、ステップアップしたいし、もう一個高みを目指そうとしたわけです。そうやって2009年をスタートしたけれど、ちょっとその壁に跳ね返されてしまいました。

しかもこの壁がなかなか高くて、まだ克服しきれていないんです。そういった意味では、今回が一番難しいかもしれない。逆に今までなんでここまで落ちなかったのかといったら、要はそこまで取り組んでいなかったんでしょうね。どこか力を抜いていたから、逆にそれが良くてステップアップできたのかもしれません。それに今回はオリンピックの経験を踏まえてのステップアップなので、少し自分に難しい課題を与えすぎたというのもあって。その方法論として、試行錯誤もしてきたし、神経質にいろいろやってきたけど、ほとんどマイナスに作用した気がします。ようやく今は試行錯誤が多すぎたということもわかってきたので、今度はそれを削って、シンプルに行こうと考えているところです。

「先輩からのメッセージ」第9回に出ていただいた心臓外科医の須磨先生も「引き算が大事だ」ということをおっしゃっていました。

その先生か言うこと、すごくよくわかります。僕も競技生活が長くなればなるほど、いろんなことを知っちゃって、選択肢が増えすぎたんですよね。このボールを打つには、手はこうして、膝はこうして、角度はこうして……。瞬時にバーっと頭に浮かぶわけです。それを2009年は、ひとつひとつ試してきたわけですけど、全然うまくいかない。「上がったパスを思い切り打ってやろう!」 ……きっと、そういうことなんですよね。自分でも早くそうしたいんですけど、ふとしたときに邪魔な考えが残ってしまうんですよ。

きっと後から振り返れば、いい時期になりますね。

久しぶりですよ。コートに向かう朝が嫌だなんて。嫁さんにも「珍しく楽しくないんでしょ?」って、言われています。あんまり家にはそういうの持ち帰らないはずだったのに。無意識に愚痴っているんでしょうね。

現在はご家族もいらっしゃるわけですが、海外遠征時は離れて過ごされるんですよね。

そうですね。だから家族よりも、パートナーやコーチといる時間のほうが長いです。

年にどれくらい海外遠征に行くのですか?

長い遠征なら3カ月くらい、その前後に単発で1週間、2週間程度の遠征が入って。それから例年2、3月に、アメリカやオーストラリアで約1カ月ほど合宿をするので、だいたい4~5カ月ぐらいは海外にいますね。

遠征中は海外の選手ともコミュニケーションを取るのですか?

もちろん取ります。僕たちが世界で勝っていくためには、外国人選手と手合わせするということが一番重要。でも試合数は限られているので、できる限り試合の前後で外国人選手と練習ゲームをするようにしています。僕らもワールドツアーに参加していますから、向こうもある程度日本チームの実力は認めてくれていて、「練習ゲームやろう」と言うと引き受けてくれるんですよね。でも4、5年前は、声をかけても全然引き受けてくれませんでしたよ。と言うのも、僕らが実力不足だったために、「お前たちとやったところで何の得がある」と思われていたんですよね。それはやっぱり悔しかったですね。でも強くなるには練習ゲームをしないといけないし、「ゲームがダメなら練習に混ぜてくれ」と粘って行くしかない。最初は、照れてしまって、なかなかできなかったですけどね。典型的な日本人のパターンです。

北欧でもビーチバレーは盛んなんですか?

夏が短い国ですが、だからこそ夏のビーチスポーツに興味があるのかもしれませんね。もちろん場所や期間も限られますけど。でも8月には北欧の大会が結構入るんですよ。歴史のある大会だし、大会自体の規模も多いので、世界連盟もベストシーズンに北欧での大会を入れているんでしょうね。

コート外でも外国人選手とコミュニケーションを取ることはありますか?

そうですね。たまに食事に行ったり、飲みに行ったりします。一番仲がいいのは、オーストラリアとカナダ。僕の中ではこの二カ国は親日家ですね。この二カ国の方は、英語も聴きとりやすいです。日本人が英語力がないと分かった上で、丁寧に話してくれるんですよ。アメリカ人なんて、絶対、そんなことしないですからね(笑)。それから北欧のチームは優しいですね。ノルウェー、スウェーデン、デンマークのチームは印象がいいです。

では、遠征で楽しいことは?

僕は食事ですね。小さい時からいろんなものを口にしていたので、好き嫌いもあまりないです。それに食というのは、国を知る上では非常に面白い要素ですよね。メニューを見てわからないものでも、つい頼んじゃいます。もちろん失敗もありますよ。中国で蟹だと思って頼んだら、ザリガニだったこともありました(笑)